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⼈⽣100年時代の社会⼈基礎⼒

社会人基礎力とは

 リンダ・グラットン博士の『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』が邦訳され刊行されたのが、2016年11月でしたが、ビジネスマンを中心に多く読まれ、瞬く間にベストセラーになりました。
 全400ページある決して読みやすい本とは言えない本書がベストセラーになった理由はいくつもあるでしょうが、経営学・経済学者として多方面のデータをもとにした分析力と洞察力は、圧倒的な説得力をもって読者に迫ってきます。

 2017年10月に、経済産業省が主導となり『我が国産業における人材力強化に向けた研究会』を設置し、研究会の第一回目として「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ」が開催されました。
 この研究会において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。

「社会人基礎力」はもともと、経済産業省が2006年に提唱した、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」というものです。
「人生100年時代」やAIなどを活用する「第四次産業革命」の下で、2006年に発表された「社会人基礎力」は、むしろその重要性を増しており、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。

 社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。
 そうした背景を受け、政府は『一億総活躍社会の実現』を掲げ、「働き方改革」が推進されるようになり、さらに「人生100年時代構想」が発足しました。
「人生100年時代」を見据えたときに、
・会社、個人に求められるものは何か?
・どのように人材活用を進めていくべきなのか?
 これらの問いに対しては、、さまざまな視点から考えていく必要があります。

我が国産業における人材力強化に向けた検討の方向性

「人生100年時代構想」を踏まえた上で、同研究会では、検討の方向性について述べており、主に以下の4つについて包括的に考え、検討していきます。

(1)リカレント教育の充実
 リカレント教育とは、生涯にわたって教育と他の諸活動(労働,余暇など)を交互におこなう、循環型の教育システムを意味します。「人生100年」を生き抜くために、働くと学ぶを一体化していく必要があります。
(2)特に大企業から中小企業等への)転職・再就職の円滑化
 従業員の幅広いキャリア構築、スキル・ノウハウの取得に向けて、雇用の流動化をどのように推し進めていくべきか。
(3)それらのベースとなる、必要とされる人材像の明確化や確保・活用
 特に人材不足の課題が顕著になるであろう中小企業において、「求められる中核人材のニーズ把握」「その確保における具体的手法」「受け入れ準備のサポート」「ダイバーシティ経営の推進」などを考えていきます。
(4)産業界として果たすべき役割
 産業政策からみる必要な人材像の明確化や、そのためのサポートのために何ができるのかを検討していきます。

人生100年を生き抜くための「社会人基礎力」  

 社会人基礎力とは、学校では教わらない、職場での経験によって身につく能力のことです。職場で求められる能力を明確に早くから意識的な育成をしていく必要があります。
 特にこれから求められることは、「既存の成功モデルの踏襲」ではなく、「新しい価値の創出」です。そのような学びの機会を、社会人になる前のみならず、働きながらも生涯を通して学び直していく姿勢(リカレント教育)を意識していくことが重要です。
 付加価値を発揮し続けないと生き残れない時代において、絶えず学びを通したアップデートや新たなスキルの獲得は不可欠になります。

 リンダ・グラットン博士の『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』は、人生100年を生き抜くための「社会人基礎力」のすべてが盛り込まれています。
 具体的には「イノベーションを生む力、創造性」や「意思決定やチームのモチベーション向上といった人間ならではのスキルと共感能力」「思考の柔軟性や敏捷性といった汎用スキル」を育むことなど、まさに「既存の成功モデルの踏襲」ではなく、「新しい価値の創出」です。
 加えて、コロナ禍で世界中先が見えない現在においては、『LIFE SHIF』の待つ全世界的な社会的意義が今後ますます大きくなると考えられます。