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ライフシフトとはなにか②

無形資産の価値

 家族や友人関係、知識、健康といった無形の資産は、それ自体が有意義な人生に不可欠であるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けてくれます。
 100年ライフを過ごすうえでは、両方の資産のバランスをとり、相乗効果をねらう必要があります。 
 但し、有形であれ、無形であれ、資産はきちんとメンテナンスをしないと、価値が減じます。
 無形資産を蓄積していくには、有形資産に偏りがちだったこれまでの時間の使い方も見直す必要があります。   
 マルチステージの人生では、どのステージをどの順番で経験するかという選択肢が多様になり、年齢とステージが一致しないことも増えていきます。
 例えば「大学生」という情報だけでは年齢を推測できなくなるのです。
 あらゆる年代層が混ざり合い、協働する機会が飛躍的に増えていき、人々の若々しさをいっそう加速させます。
 同時に、どの世代においても「若さと柔軟性」、「遊びと即興」、「未知の活動に対する前向きな姿勢」が重要な意味を持つことになります。

新たな3つのステージ

 ライフシフトの新しい動きに伴い、次の3つのステージが新たに出現します。
 1つ目は、一ヶ所に腰を落ち着けることなく、身軽に探検と旅を続け、幅広い進路を検討する「エクスプローラー(探検者)」です。
 この時期では、多様な人たちの苦悩や喜びを自分事のように考える「るつぼの経験」が組み込まれていることが望ましいとグラットンは言います。
 他の人生の物語にふれることで、自分の価値観が揺さぶられ、アイデンティティについて熟考できるからです。

 2つ目は、組織に属さずに、自由と柔軟性を重視して小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」です。
 このステージの人たちは、事業活動自体を目的としており、試行錯誤しながら未来を探索します。
 このステージでは、安心して失敗ができ、現在の18~30歳の層にとっては一つの選択肢になりつつあります。
 彼らは都市部にある創造性の集積地に集まって、みんなで協働する精神を重視しています。

 3つ目は、異なる種類の仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」です。
 他の新しいステージと同様、年齢を問わず実践できますが、この生き方をとりわけ魅力に感じるのは、すでにスキルや人的ネットワークの土台を築いている人たちです。
 このステージにうまく移行するには、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトで実験を始め、汎用的スキルや社外の多様なネットワークといった変身資産を育むことが必要です。

 今後は、ステージ間の移行回数が増えていくため、移行期間に向けた事前の準備が欠かせません。
 移行期間中は、主に活力資産と生産性資産への投資が行われますが、金銭的資産が減ることは避けられないことには留意すべきです。
 こうした新たなステージが出現し、その選択肢や順序が多様化するにつれ、年齢とステージの一致を前提につくられてきた企業の人事制度や教育や労働、結婚といった社会制度も変化を強いられることになっていきます。

「エクスプローラー(探検者)」「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」「ポートフォリオ・ワーカー」の3つのステージは、我が国の社会状況ではまだなじまないように思いますが、生産性資産、活力資産、変身資産の「見えない資産」を獲得し、新しいステージで生きていくことは今後多くの人に求められるでしょう。