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ライフシフトとはなにか①

「有形資産」と「無形資産」 

 リンダ・グラットンは、資産を「有形財産」と「無形財産」に分けて説明しました。
 有形資産は、現金(預金)やマイホーム、有価証券、貴金属など一般的な資産を指します。
「有形資産」が重要なことは言うまでもありませんが、お金を稼ぐのは、それを欲しい物と交換できるからで、お金それ自体を目的にしているわけではありません。
 一方、無形資産は、生産性資産、活力資産、変身資産の3つに分類しました。
 マルチステージを生きるために、ライフシフトで重視されているのが、「無形資産」です。

生産性資産と活力資産

 生産性資産とは、生産性や所得、キャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産を指します。
 例えば、長年かけて培ってきたスキルや知識です。
 ただし、キャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに、生涯生き抜くことは難しくなります。
 そのため、生涯を通じて、複数の新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが重要です。
 身につけておきたいスキルや知識は、情熱を注げることを前提としつつも、経済的な価値を生み出せて、しかも希少性がある方が望ましいといえます。

 具体的には「イノベーションを生む力、創造性」や「意思決定やチームのモチベーション向上といった人間ならではのスキルと共感能力」「思考の柔軟性や敏捷性といった汎用スキル」を育むことです。
 また、仲間の存在も生産性資産の一端を担います。
 高い信頼性を持つ職業上のネットワークは互いの成長やイノベーションの促進に大いに役立ちます。
 時としてコーチや支援者となってくれたり、必要な人脈を紹介したりしてくれます。
 こうした存在を、グラットンは「ポッセ」と呼びます。
 評判も生産性向上に寄与してくれます。
 今後は、ソーシャルメディアにより評判を左右する情報がますます拡散されやすくなるため、幅広い範囲で自分の評判を管理することが求められるようになります。

 活力資産とは、人に幸福感をもたらし、やる気をかき立てる資産を指します。
 具体的には、肉体的・精神的健康や、友人や家族との良好な関係などです。
 まず、健康は長寿化時代において価値を増します。
 とりわけ、明晰で健康な脳を保つことは大きな意味を持ちます。
 最近の研究によると、加齢により脳の機能が衰えるのを避けられないという常識が変わりつつあり、脳をくり返し使用すれば、機能を高めたりダメージからの回復を促したりすることもできるといいます。
 また、ストレスを引き起こす要因をうまく管理することも大事です。
 職場と家庭のバランスをとり、両者での前向きな感情が伝播し合う効果は重要です。
 そのほか、活力資産の形成に役立つのは、長い年月をかけて築かれ、深く結びついた親しい友人たちとの関係です。
 これをグラットンは「自己再生のコミュニティ」と呼びます。

変身資産

 変身資産とは、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことです。
 移行につきものの不確実性への対処能力を促す要素ともいえます。
 具体的には、次の3つの要素が必要となります。

 1つ目は、「自分について良く知っていること」です。
 自分の過去、現在、未来について内省し続けることで、変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保ちやすくなります。

 2つ目は、「多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること」です。
 既存のネットワークは同質性が高いため、変化を促すよりも、同質であることを後押しする傾向が強くなります。
 そのため、新しい視点を得て、変身を遂げていくには、多様性に富んだネットワークに接することが欠かせません。

 3つ目は、「新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること」です。
 変身の過程で既存の行動パターンが脅かされるときに、新しいやり方を実験し、受容する姿勢を持つのです。
 すると、新しい生き方を探索し、適応することができるようになり、型にはまった行動を打破することが必要となります。

 このように、3つの「見えない資産」に投資を続け、自らを再創造(リクリエーション)することが、充実した100年ライフを送るためのカギとなるでしょう。