BLOG ブログ

終活関連お勧め本⑤  『もしも一年後、この世にいないとしたら』

大切なことを先延ばしにしていませんか?

 本書は、国立がん研究センター中央病院の清水研医師の著作です。
 多くの人にとって「死」はいつか自分に訪れるということは頭ではわかっていても、実感はしていないのが実情でしょう。
 しかし、誰もががんになる可能性がある現在、意外に死は身近にあると思います。
 清水医師が本書の冒頭でいうように、「大切なことを先延ばしにしていませんか」という問いかけにハッとする人も少なくないでしょう。
 自分にとってやりたいことがあったとしても、「今は仕事で忙しいから時間ができたらやろう」「そのうちやろう」「定年後にゆっくりやろう」等々。
 先延ばしにしている人は、結局いつになってもやりたいことができない場合が多いのも事実です。
「このままでよいのだろうか?」という漠然とした疑問を感じながらも、「今、生きている時間を大切にしていない人がいかに多いか」と清水医師は言います。
 がんと心の問題を専門とする精神科医である清水医師は、がん患者とその家族の診療を担当していくなかで、「毎日をなんとなく生きていた」自分自身の人生が変わったといいます。
「あまり自分にとって大切ではないこと」と、「後回しにせずに取り組んだほうがよい大切なこと」をきちんと区別できるようになったと記しています。
 その結果、確信をもって日々が生きられるようになり、納得のいく人生に近づいたとも述べています。
 言い古されたフレーズですが、「後悔しない人生にするために、いまを大切に生きる」しかないのでしょう。

人生の終わりが来るのを分かっていても懸命に生きる

 清水医師は成人するまで素直に「こうしたい」という自分の気持ちをずっと押し込めて窮屈に成長し、精神科医になってからも「自分は何のために生きるのか」に葛藤しながらやってきました。
 その清水医師が死に直面したがん患者さんと向き合うことで、少しずつ心境の変化が起こります。
 医師としても目を背けたくなる厳しい状況にあっても、残された日々を懸命に生きようとする患者さんの姿に心打たれます。
 マルチン・ルターによると言われる「たとえ世界の終末が明日であっても、自分は今日リンゴの木を植える」という言葉に、清水医師は「もうすぐ人生の終わりが来るのを分かっているのに、なぜそんなに真剣に毎日を生きられるのか」ということが謎でした。
 しかし、がん患者さんと向き合うことで、人生に感謝することができるようになり、「普通の日の連続」が幸せと思えるようになった結果、「人生の終わりが来るのを分かっていても残された生を懸命に生きる」人々の心情を理解することができるようになりました。
「もしも一年後、この世にいないとしたら」という清水医師のメッセージは人生における一人ひとりの課題となりうるものです。