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終活関連お勧め本② 『死ぬ瞬間』『一切なりゆき』

『死ぬ瞬間』~死に至る患者の内的過程

 終末期医療の先駆者、エリザベス・キューブラー・ロス医師は、著書『死ぬ瞬間』で、死期が迫った患者の精神状態が、以下のように変化すると主張します。
《否認→怒り→取引→抑鬱→受容》病気を知らされた衝撃で殆どの患者は「否認」、死を拒否します。                             
 次に、死を自覚しても、「なぜ死なねばならないのか」と「怒り」を覚え、神と「取引」して延命を願います。
 それでも回避できないと知ると「抑鬱」状態になりますが、やがては「受容」に至ります。
 すなわち、最初から死を受け入れられる人などいないのです。

 キリスト教文化圏における死の捉え方と、私たち日本人の死の捉え方は若干違うかもしれません。
 しかし、いざ余命を告げられても、思い残すことがないように準備をしておけば、死の受容に至るまでのショックは小さくすることもできるかもしれません。
 現代、医師の多くが「自分が死ぬときはガンがいい」と言うようです。
 理由は「死ぬまでの間に少しは時間があり、(死ぬ)準備ができるから」だそうです。

『一切なりゆき』~死が身近になった等身大の自分

 キューブラー・ロスが「死に至る過程」を論じたずっと以前から、死は人々の間で、忌み嫌うものとしてタブー視されてきました。
 しかし、超高齢社会の進展や二人に一人がガンに罹患するといわれる現代において、死はタブーではなく、当たり前のこととして語られるようになりました。
 同時に、年齢を重ねた先達が語る等身大の自分について多くの人々の共感を呼んでいます。

 2019年度年間ベストセラー第1位は、150万部を超えた女優樹木希林の『一切なりゆき』です。
 この本は樹木希林の独自な世界観が投影されたものですが、平易で万人が納得する人生訓が特筆される名著です。
「人は死ぬと実感できれば、しっかり生きられる」や「人生なんて自分が思うようにいかなくて当たり前」等、等身大の自分から発せられた言葉は、キューブラー・ロス医師が死について提示した時代とは全く違った死についての捉え方を、いまを生きる私たちに示唆します。
 死は忌み嫌うべき特別なものではなく、いまを楽しく生きた延長にあるだけのものという樹木希林の達観した死生観は、終活を考え、実践する上でも多くを学ぶところがあります。