BLOG ブログ

ライフシフトモデル② ロックンローラー地域活動家

ミュージシャン&地域クリエーター

 宇都雄哉さん(ご本人の了承を得て実名で紹介させて頂きます)は38歳ですが、同年代には滅多にいない熱血漢です。
 もともと、洋楽のロックンロールが大好きで、若い頃からバンドを組んで演奏したり、自ら楽曲を作ったりしてきた筋金入りのアーティストです。
 宇都さんの創る曲は、メッセージ性が強い曲が多く、自ら信じる曲作りをして、社会に発信し続けています。彼はCDを自主制作したりして、何とか音楽で食えるようにしていきたいと頑張ってきましたが、未だその夢は道半ばです。

 宇都さんは建築会社に勤めながら生計を立てていますが、ミュージシャンとは別に「地域活動家」というもう1つの顔を持っています。
 彼は古い空き家を現状で借り、仲間と一緒にDIYで改修して、地域のクリエーター/イノベーター拠点「はつのいえ」をオープンしました。
「はつのいえ」のネーミングも、亡くなったこの古家の所有者が「はつさん」だったところから付けたとのことです。
 また、地域ボランティアで定期的に朝の清掃活動も自治会の人たちと共同でながく続けています。
 こうしたエピソードからも、近頃では珍しい実直で誠実な彼の人柄が伺えます。
 宇都さんは、人間関係が希薄といわれる現代において、空き家を含む「エリアリノベーション」を通して、自然と接点を持った人間味のある暮らしの復興と伝統的な「向こう三軒両隣り」の安心感のある関係性を築けるコミュニティの再生を目指しています。

理想主義者の変身資産

 ライフシフトゼミでは、宇都さんの理想主義者として熱くほとばしるほどの熱情と他の現実的視点に根ざした参加者とは度々対立する場面もありましたが、会を重ねるにつれて、互いに少しずつ理解し合い、よい影響を与え合う関係性にシフトしてきたように見えました。
 経済至上主義を真っ向から否定する宇都さんは、「農のある暮らし」を目標に掲げ、自給自足的な生活を志向してきましたが、現実はお金がなければ、今の社会で生活はできません。
 この現実との乖離に、理想主義者の宇都さんはずっと悩んできました。
 ゼミの参加者の多くも自らの理想は持っていますが、現実に即したところでの理想を目標にしています。
 ゼミの最終日に、宇都さんの行動計画の1つに「マネタイズ思考を強化する」という目標が入ったことが、彼にとって大きな変化であると思われます。

 宇都さんの生き方をライフシフトの考え方でみると、変身資産、すなわち人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力は確実にあります。
 移行につきものの不確実性への対処能力を促すには3つの要素が必要ですが、1つ目の「自分について良く知っていること」と2つ目の「多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること」は既に充分投資してきています。
 3つ目の「新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること」では、思い込みに捉われず、新しい生き方を探索していくことで、新たな地平に立つことができるでしょう。
 宇都さんはゼミが終了して2カ月後、地域活動の拠点「まち力舎」を新たにスタートさせました。
 今後の飛躍が期待されます。