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認知症の親の自宅売却問題

認知症の母

 山内和子さん〈仮名、以下人物は全て仮名〉は80歳。
 5年前に夫を亡くして、現在○○県内にある築48年の自宅に一人で住んでいます。
 52歳の一人娘森本いずみさんは、家族と都内の分譲マンションに住んでいました。
 相続時に夫の名義だった自宅は和子さんの名義とし、預貯金は娘と2分の1ずつ遺産分割しました。
 和子さんは2年程前に認知症を発症し、いずみさんが介護保険の申請をして、要介護1の認定を受けました。
 当初、身の回りのことは自分で出来ましたが、最近は自宅での入浴が一人でできなくなりました。
 買い物にも行かなくなり、週2回のデイサービスで入浴し、週3回ホームヘルパーが来てくれて何とかやってきました。
 
 今回介護保険の更新で要介護3になり、担当のケアマネジャーからはこれ以上在宅での独居生活は無理があると言われました。
 いずみさんの子供は独立し、夫と二人暮らしでしたが、半年前に地方で暮らしていた85歳になる夫の母親を引取りました。
 姑は認知症こそありませんでしたが、歩行が不安定で外出は一人で出来ません。
 通院する時もいずみさんが付き添っていました。
 こうした状況では、和子さんの施設入所を考えるしかなく、ケアマネジャーに頼んで適当な入所施設を探してもらいました。

母名義の自宅が売却できない!

 亡夫は自営業だったため、和子さんの年金は月額6万円程度で、夫の遺した預貯金を取り崩しながら、5年間やってきました。
 ケアマネジャーに紹介された入居施設の月額利用料はどこも15万円以上で、入所すると預貯金はじきに底をついてしまいます。
 いずみさんは実家を売却して施設利用料を捻出しようと考え、知り合いの不動産屋に相談しました。
 しかし、名義人である母が認知症で契約行為ができないため売却はできないと言われました。
 いずみさんは「母の財産である自宅を売って、母のために使うことが何故できないのですか」と訴えましたが、
 不動産屋は「認知症の方は契約ができないと法律で決まってますから」と言われました。
 いずみさんは「それではどうしたら、自宅を売ることができるのですか?」と問い返しました。
 少し間をおいて、不動産屋は言いにくそうに応えました。
「娘さんには申し訳ないですが、お母さまが亡くなって、娘さんが相続してからなら、娘さんが売ることはできます」
 いずみさんは暗澹たる気持ちになりましたが、「ほかに何か方法はないのですか」なおも尋ねました。
 すると「私も詳しくは分からないのですが、成年後見制度というのがあって、それを使うと認知症の方の代行を後見人がして、売買することができます」と教えてくれました。

 いずみさんも成年後見制度のことを聞いたことがありましたが、内容が分からなかったので、これを機会に調べてみることにしました。