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成年後見制度

成年後見制度とは

 認知症の母の自宅を売却できないと知った森本いずみさんは成年後見制度について話を聞くため、実家のK市にある成年後見センターを訪ねました。
 預金口座を保有する本人が認知症になったことを金融機関が知ると、家族であっても預貯金の引き出しができなくなることを知りました。
 いずみさんは母の普通預金口座のキャッシュカードを預り、暗証番号を聞いていたので、今のところ引き出すことはできましたが、定期預金を解約するのは難しいかもしれませんと言われました。

「成年後見人制度」は、認知症で判断能力の低下した人に成年後見人等をつけて、契約などの法律行為を代わりに行ってもらうものです。
 本人の精神上の障害や判断能力の程度によって、後見・保佐・補助の3つの類型に区分されます。
 全体の8割を占める後見は本人に関する全ての法律行為を代行するものですが、保佐、補助は部分的な代行となります。
 家庭裁判所が選任した成年後見人は「財産管理」と「身上保護(監護)」を行います。
「財産管理」は本人(被後見人といいます)が所有する預貯金・不動産・有価証券等すべての財産を管理し、本人のために支出します。
「身上保護(監護)」は病院に入院したり、施設に入所したりする時に、本人に代わって契約、手続き等を行うものです。

成年後見制度を利用する

 いずみさんは成年後見センターの相談員に尋ねました。            
「うちの母は成年後見制度を利用できるのでしょうか? もしできたなら、後見人さんに実家を売却してもらうことはできるのでしょうか?」
 相談員は答えました。                       
「成年後見制度を利用するために申請することはできます。でも、申請理由が実家を売却するためというのはダメです」
「成年後見人はあくまでも本人に必要な支出かどうかを考えて支出をするか否かを決めます」
「家を売りたいからという家族の都合で、制度申請や所持金の支出をするというのは好ましいとは言えません」
「たとえ不動産を売却する必要があると後見人が判断したとしても、裁判所に申立てをして、許可されなければ売却することはできません」

 話を聞いていたいずみさんが多少困惑している様子を察した相談員は言いました。
「今お話したことは原則ですが、山内さんのケースの場合、施設入所は妥当だと思います」
「後見人がついたら、施設利用料の支払を本人の預貯金で賄っていきますが、預貯金が底をつき、今後本人が自宅に戻る可能性がないならば、売却を申立てれば、裁判所は許可すると思います」
「ただ担当した後見人の考え方もありますので、絶対とは言えませんが」

 相談員の話を聞き、いずみさんは成年後見制度の申請を決めました。
「ところで後見制度を使うのに費用はどれくらいかかるのですか?」と聞きました。
「後見人の報酬は定額ではなく、裁判所が決めた年払いの報酬額を本人の預貯金から頂きますが、通常月額で2~4万円です」
「それでは申請を進めさせていただきます」             
 いずみさんは、母の施設入所について、少し先が見えてきたことに安堵しました。

任意後見制度

認知症になってしまった時に、家族が困ることを整理してみましょう。
・不動産の売却や管理ができなくなります
・預貯金の引き出しができなくなります
・相続税対策でアパート等を建設して収益不動産の運用をすることもできません等々。                                                「成年後見制度」は、本人が認知症になってからでないと使えませんが、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、予め支援者(任意後見人)を決めておく任意後見制度を利用することはできます。任意後見人は子供などの近親者もできますが、実際に任意後見が利用されるのは本人の判断能力が低下してしまった後に限られます。