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終活関連お勧め本⑥             在宅ひとり死のススメ

終活関連本は女性作家の台頭!

 2019年度年間ベストセラー第1位は150万部を超えた女優樹木希林の『一切なりゆき』でしたが、これら終活に関連する書籍は、本が売れなくなったと言われる出版業界にあっても比較的活況を呈しています。
 これらの著作は、作家の佐藤愛子を初め、女性の先品が多く、男性では五木寛之や森村誠一等、著明な作家の手によるものが散見される程度で、女性の圧倒的パワーに驚嘆します。
 一方、2021年度ベストセラーになっているのが、社会学者上野千鶴子の『在宅ひとり死のススメ』です。
 上野さんは女性学・ジェンダー研究の第一人者で、近年『おひとりさまの老後』ほか「おひとりさま三部作」を発刊したことでも話題になりました。
 
 まず、「在宅ひとり死のススメ」というタイトルに目が惹かれます。
 上野さん自身、今年75歳になり、後期高齢者の仲間入りをして、おひとり暮らしをされているため、自分事としても考えられるテーマだと思われます。
 上野さんが本書の中で言うように、この10年で死に対する社会や大衆の捉え方が全く変わりました。
 終活という言葉がポピュラーになり、相続や遺言のことを含めて、家族の中でも話題にできるようになってきました。
 死は忌み嫌うべき特別なものではなく、いまを楽しく生きた延長にあるだけのものという樹木希林の死生観は、徐々に一般の人たちにも浸透しつつあるように思います。

在宅ひとり死はできるのか?

 上野さんは「わたしは生きている間のことしか、関心がありません」
「死後の世界など、まっぴら。葬式やお墓などの終活にも、何の関心もありません」
「葬儀は密葬で、遺骨は散骨してほしい」とホンネを語リますが、その意思をもとに遺言書を作成し、遺言執行人も指名してあるとのこと。
 終活に関心がないと言いながらも、さすがにリアリストとして、お見事な終活をされています。

 上野さんの「満足のいく老後の三条件」は、①慣れ親しんだ家から離れない、②金持ちより人持ち、③他人に遠慮しないですむ自律した暮らし、です。
 上野さんの主張は、至極もっともで、共感するところですが、実際に手足が動かなくなったり、認知症になったりして、他人の手を借りてしか生活ができなくなったときに「満足のいく老後の三条件」を担保する手立てについては、既存の介護保険等に基づく社会資源の活用に留まり、それ以上に明確な言及はされていません。

 上野さんがいう「在宅ひとり死」ができるロールモデルは、上野さんも含め、これから私たちが模索しながら、作り上げていくものだと思います。