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終活関連お勧め本③ 『精神科医が見つけた3つの幸福』

脳科学から幸せを手に入れる!

 著者の精神科医樺沢紫苑は「脳内物質が幸せを決める」と主張します。
 幸せという極めて抽象的で曖昧な概念を、3つの脳内物質の三段重理論によって説明し、幸せを手に入れるための実用書として著わしたところが出色だと思います。
 本書は、心理学や脳科学に基づくエビデンスが明確で、説得力があります。
 例えば、「お金を使うときに感謝するとお金が増えていく」という類のスピリチュアル系の本が少し前に流行りましたが、その理由を著者は脳科学の視点から明快に言及しています。
 本書で一番共感したのは、幸福は結果ではなくプロセスであるということを、脳科学の視点から説明したところです。
 幸福は「今、ここにある」というフレーズは、「相田みつを」を引き合いに出すまでもなく、多くの人によって語られてきたことです。
 著者は従来からある思考や経験知ではないところから言及したのが、特筆すべき点です。
 一見終活とは直接関係ないと思われる本書は、実は「よりよく生きるためにどう行動したらよいか」を示唆してくれる極めて有効な実用書です。

オキシトシン的幸福をもたらす過去を想起する力

「若者は未来に生き、老人は過去に生きる」という格言があります。
 若者は「未来に夢を見」、老人は「思い出を振り返る」のは、至極当然のことです。
 この格言から本書を読んでいて、1つだけ引っ掛かったことありました。
「つながる」を前提としたオキシトシン的幸福のところで、孤独を解消する方法として人やペットとの交流を奨励していますが、リアルな関係性だけがオキシトシン的幸福をもたらすとは言えない面もあると思います。
 これも記憶に関する脳内の問題だと思いますが、人には過去を想起する力(回想や追憶)があります。
 記憶はそのままの事実ではなく、自分にとつて都合の良い記憶に塗り替えられると言われますが、それがプラスの感情を伴うイメージとして想起された場合、事実とは異なったものであれ、オキシトシン的幸福をもたらす効果があるものと推測されます。
 記憶の想起によるオキシトシン的幸福効果に関する研究成果がないためか、本書ではこの件には言及していません。
 しかし、高齢者は過去に生きるという事実を否定的に捉えるのではなく、「思い出を振り返る」ことが脳内物質のオキシトシン的幸福をもたらすという効果をもっと評価すべきと思います。