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分譲マンションの長寿化問題

老朽化した分譲マンション対策

 1970年以前に建設された分譲マンションは築50年を迎え、マンションの老朽化が進み、その寿命をいかに延ばすかが課題になっています。
 古くなったマンションでは、住民が高齢化し、管理の担い手が足りません。
 加えて、住民が亡くなり、空き室も増加して、修繕のための積立金が十分に徴収できないケースも多くなっています。
 本来、建物の管理は所有者の自己責任ですが、管理機能が不全になれば、建物の老朽化はより加速化します。

 国土交通省の推計では、2019年末時点で分譲マンションは約666万戸あり、約1,551万人が住んでいます。
 うち築40年超の物件は、約92万戸で、20年後には4倍以上の約385万戸に増えるという推計です。
 老朽化したマンションの建て替えをするにも、所有者の5分の4以上の同意が必要なため、進まないケースが殆どです。
 管理不全のマンションは、外壁がはがれるなどして、周囲に危険を及ぼす可能性もあります。
 また、1981年以前の旧耐震基準で造られた物件が、なお約100万戸残っています。

 物件の老朽化を出来るだけ防止し、その寿命を延ばすには、所有者で作る管理組合の取り組みと定期的な修繕が必要ですが、難題が山積しています。
 東京都は、1983年以前に建てられたマンションを対象に、管理状況の届け出を義務化しました。
 老朽化したマンションに対するこうした自治体の支援対策は、今後ますます必要になると思います。

将来が心配なタワーマンションの弱点

 コロナ禍以前は、都心の一等地に建設された5,000万円以上のタワーマンション(以下、「タワマン」と称す)が、人気で購入される人も多くいました。
 東京オリンピック跡地に建設される予定のタワマン計画は延期となり、購入予定者は困惑しているとの報道を最近よく耳にします。

 2019年10月に襲来した台風19号の影響で、神奈川県川崎市の武蔵小杉駅近くに建つタワマンが水害に襲われたたというニュースは記憶に新しいところです。
 このタワマンは、地上47階建てで643世帯、約1,500人が住んでいますが、台風で周囲の道路が冠水しました。
 タワマンの電気室、機械室がある地下3階が浸水し、エレベーターは止まり、2週間近く停電や断水が続きました。
 もともと武蔵小杉は、「住みたい街ランキング」の上位にランクインしていた超人気エリアでしたが、大型台風の襲来により、タワマン付近は最大浸水1.3mという意外な弱点を露呈することになりました。
 武蔵小杉のタワマンの水害はレアケースかもしれませんが、コロナ禍で露呈したタワマンに共通する意外な弱点があります。

 それは音の問題です。
 上下の騒音は、マンション建設の技術向上により、現在優れた遮音性を確保していますが、問題は高層階における横(隣室)の騒音です。
 タワマンの場合、高層階では地震時に建物全体がわざと動くような構造にするため、低層階と違い、コンクリートの戸境壁は使えません。
 したがって、通常のマンションに比べ、高層階では隣室との壁は薄く、横の遮音性は低くなります。
 コロナ禍で日中在宅することが多くなったことで、タワマン高層階の夜間は気にならなかった隣家の騒音問題が露呈しました。

 しかし、タワマンのほんとうの弱点は、騒音の問題等ではありません。
 それは、タワマンに住む住民同士のコミュニティの欠如から派生する様々な問題です。
 共稼ぎで働く若い夫婦の住民は、管理組合への関心が希薄になりがちで、管理組合の意見の集約も容易ではありません。
 老朽化したマンションの管理問題の困難さを指摘したように、タワマンでも40年後には、同じ問題が表面化します。
 すべてのタワマンが40年後に大規模修繕ができるのか、甚だ疑問と言わざるを得ません。
 従来の分譲マンションの数倍もの住民が暮らし、管理費や修繕積立金も高額なタワマンの将来は、現在の老朽化したマンション問題よりはるかに深刻であると危惧されます。