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30代からの老後の備えは住宅確保から

我が国における住まい方の変遷

 我が国の住まい方は、戦前の一つの居室を食事・寝室に利用するという「食寝転用」モデルから、戦後のダイニングキッチンと寝室を分離した「食寝分離」モデルに転換しました。
 1950年代後半から日本住宅公団(現UR都市機構)が供給し始めた2DKの団地は、当時の一般サラリーマンのスタンダードな住まいとして、急速に拡大していきました。
 1970年代に入ると、洋式トイレの普及やリビング・子ども部屋等、住まいの用途も拡大し、2DKから3LDK以上の工業化住宅も出現してきました。
 1980年代後半には、不動産バブルによる都心の地価が急騰して、郊外の住宅開発が加速化しました。
 同時期に並行してマンション開発も進み、利便性の高い都心部のマンションに住む人も多くなりました。
 近年は、タワーマンションの登場により、より利便性の高い都市型マンションの人気が高まっています。

コロナ禍による住まい方の変化

 新型コロナの影響は、日々の暮らしを大きく変え、住まい方も徐々に変えてきています。
 以前は、駅近の利便性の高い物件が一番人気でしたが、コロナ禍による在宅勤務、テレワークの拡大により、床面積が広めの郊外の物件が注目を集めています。
 リクルート住まいカンパニ―が2020年5月に実施した調査によると、家の広さを重視する人が52%と、2019年12月の調査より10ポイント増加し、駅からの近さ30%を大きく上回ったといいます。
 コロナ以前には人気のあったタワーマンションの販売が苦境に立たされる一方で、駅から遠いが緑の多い郊外の中古一戸建が今後ますます注目されていくでしょう。

 同時に、今後右肩上がり景気回復は期待できず、コロナ禍による労働環境の厳しさからすると、住まいに対する考え方も必然的に変わるであろうと思います。
「家を持つ(所有する)」という考えは、若い人ほど希薄になり、30年以上の住宅ローンを払い続ける生活をするという人生設計は徐々に少なくなるのではないでしょうか。
 

老後の備えに住宅を買う

 終活は、従来シニア世代のやるものでしたが、コロナ禍により30~40代の現役世代にすら、将来に向かって何らかの対策を前倒しで進めることの重要性を喚起しました。
 老後の住まいの確保は、おひとりさまの大きな問題のひとつであることは、以前述べたとおりですが、住まいは全世代にとって重要な問題です。

 若い人は持ち家ではなく賃貸派が多いのは事実ですが、30~40代の未婚女性の中には、マンションを購入する人が多くなっています。
 これらの女性は一生独身でいるかもしれないという気持ちといつか結婚するかもしれないという思いが半々です。
 したがって、購入するマンションも2LDK以上の少し広めの間取りを選びます。
 同年代の独身男性は、こうした考えに及ばず、多くは生涯賃貸住宅の生活しかできません。
 女性の生活に根差した現実的な視点は、男性よりはるかに優れていて、このあたりも女性が男性より長寿の理由の1つであろうと、私は思っています。

 現在日本の持家比率は約61%(全世代平均)ですが、2040年には300万人以上の高齢者が自分の家を持たない状況になります。
 これら高齢者は、高齢者向け施設、公営賃貸住宅、民間の一般賃貸住宅に住むことになりますが、施設や公営賃貸住宅で受け入れるには限度があり、大部分を民間の一般賃貸住宅に頼らざるを得ない状況にあると考えられます。
 不安定な雇用情勢、年金受給額の減少等、先行き不透明な社会的状況下においては、居住する場所だけは若いうちに確保すべきだと、私は思います。
 従って、30~40代のうちに、出来れば持ち家を取得することをお勧めします。
 但し、3,500万円以上の新築物件を35年のローンで購入する必要はありません。

 例えば、35歳の時に2,000万円の物件を25年のフルローン(頭金0、仲介手数料等の諸費用は別)で購入すると、月々の支払いは75,000円程度(金利1%)で60歳には完済します。
 ファミリータイプの賃貸マンションならば、月家賃は同等かそれ以上の価格でしょう。
 2,000万円出せば、私が住む埼玉県越谷市近辺ならば、比較的良質な中古住宅を購入することも可能です。
 持ち家でない人は、多少無理をしても将来的なことを考えて、住宅を購入すべきです。
 出来れば、マンションではなく、多少駅から離れていても、一戸建をお勧めします。
 何故マンションではなく、一戸建なのかは次回以降の記事でお伝えします。