BLOG ブログ

人生100年時代を体現する人!

私が目標とする「いきいき人生」を体現する86歳の彼女

 86歳の橋本かな子さん〈仮名〉は都内A区で一人暮らしをしています。
 50歳代の子供2人は、近隣に家庭をもち、孫が5人、曾孫も1人います。
 子供たち家族との関係は良好で、長女夫婦からは年老いた母との同居の話も出ていますが、当人は頑として受け入れませんでした。
「私は父さん(夫)を早く亡くし、ずっと独りでやってきたし、独りのほうが気楽でいいのよ」
と、あっけらかんとして言います。
 かな子さんは、下町の江戸っ子らしく、竹を割ったようような性格で、底向けに明るい人です。
 そして、未だ現役で働いています。
 かな子さんの仕事は、生鮮市場の経理で、50年近く続けてやっています。市場で、かな子さんを知らない人は誰もいないほどでした。
 かな子さんは毎朝4時に起床して、5時には職場に出ています。
 職場では経理の仕事をしていますが、机に座っていることが殆どないといいます。
 かな子さんからみれば子や孫の世代にあたる威勢のいい男たちを相手にして仕事をしています。
 とにかく忙しく、計算は電卓を使わず、殆ど暗算でやります。
 午後3時過ぎには帰宅しますが、一人暮らしなので、休日以外はそれから炊事洗濯をします。

 2020年1月初め、私はかな子さんに会いました。
「橋本さん、年始年末はどう過ごされたのですか?」
「市場は年末はかき入れ時だしね。30日まで仕事よ。でも私、仕事楽しいし、大好きだからね。全然苦にならないのよ」
「そうですか。それはお疲れ様でした。お正月は自宅でゆっくりできましたか?」
 かな子さんの次の言葉を聞いて、私は度肝を抜かれました。
「私、2日にクラシックのコンサート行って、4日は上野の美術館に絵を観に行ったの。よかったわよ。私の趣味だからね」
と、少女のような笑顔で応えました。

 この時、70歳過ぎにしか見えない彼女の若さの秘訣を見たような気がしました。
 好きな仕事を目いっぱいして、趣味も目いっぱい楽しむ、86歳の彼女がまぶしく、輝いて見えました。
 私も彼女のように、いつまでも「いきいきした人生」を送りたいと心底思います。

「いきいき人生」とは

 橋本かな子さんは、子供たちとの同居を断り続けていますが、子供や孫たちから慕われ、とても仲良しです。
 通常、別居していると孫が小さいうちは頻繁に行き来をしていても、孫が成人すれば疎遠になるのが普通です。
 かな子さんは言います。
「家族といえども、結局他人だからね。お互いに甘え過ぎてはいけない。仲が良いのと甘えることは別だからね」
 昭和一桁生まれの一本筋の通った在り方にも、私は強く惹かれます。

 橋本かな子さんの生き方から、人生100年時代について多くの学ぶことがあります。
 私たちは社会生活を送る上で必要なことがいくつかあります。
 例えば、
1.「健康であること」
2.「最低限食べるためのお金があること」
3.「仕事をすること、家事・育児をすること等の社会的役割を担うこと」
これら《~しなければならない》ことは、社会生活を送る上で欠かせないことです。
 これを《Mustのキーワード》と私は呼びます。
 一方、
1.「社会や人とのつながり」
2.「生きがいや趣味」
3.「知的な活動」などは《~したい》という個人的問題になります。
 これを《Wantのキーワード》と呼びます。

 社会生活に《Mustのキーワード》は必須ですが、《Wantのキーワード》は各自の選択になります。
 かな子さんは、職場で多くの人と係わりながら、知的活動である経理の仕事を楽しんでやり、収入を得ています。
 こうした生活は生きがいとなり、健康そのものです。

 かな子さんが体現する《Mustのキーワード》と《Wantのキーワード》が別々ではなく、重なる生き方こそ、理想的な「いきいき人生」のモデルと言えるでしょう。