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日本型ライフシフトの現状

シニア世代のライフシフト

 リンダ・グラットン博士の『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』が日本で邦訳され出版されたのが、5年前の2016年で、翻訳本としては異例の30万部を超えるベストセラーになりました。

 その後、ライフシフトという言葉が少しずつ社会に浸透していくとともに、その考え方を取り入れ、ライフシフトを普及していこうとする様々な活動が展開されるようになってきました。

 例えば、株式会社ライフシフトジャパンは2017年に設立され、100年ライフのロールモデルを「ライフシフター」と命名し、全国からライフシフターを発掘して、セミナーやイベントを開催する事業を行っています。
 また、株式会社ライフシフトは現役の大学教授が中心になって、「ライフシフト大学」を設立し、ライフシフトを学術的、系統的に学び、卒業生には資格付与までする事業を行っています。
 この2つの企業だけでなく、一般社団等の法人格を持ったライフシフト研究所や〇〇ライフシフト研究会の類まで、現在ライフシフト関連の様々な組織が存在します。
 これらライフシフト関連の団体・組織は、グラットン博士が提唱したライフシフトの考え方をそのまま伝えるのではなく、日本人のニーズに合わせたコンテンツにアレンジして提供しています。
 特によくみられるのは、シニア世代の生き方や働き方に関連して、ライフシフトの考え方を援用したものです。
 人生100年時代、70歳まで働かなくてはならないと言われる現在、定年まで続けてきた仕事をそのまま続けるのか、新しいことを始めるのかは、シニア世代にとつて大きな関心事です。
 ただ、趣味といえば会社時代に覚えたゴルフぐらいしかないとなると、何か別の生きがいはないものかと、考え始める人も多いのではないのでしょうか?

ライフシフトのロールモデル

 シニア層のニーズとしてライフシフトの考え方がマッチするのです。キャリア形成コンサルや起業支援コンサルを行う会社がこぞって、ライフシフトに目を向けるのは至極当然です。
共通するのは、シニア世代で独立起業した人をライフシフトロールモデルとして位置づけ、ライフシフト講座やセミナーで登壇させ、起業に至る経験談を受講者の前でプレゼンさせるというものです。
 ここで私が気になったのは、ロールモデルになる人は、高スキル・高キャリアの人が圧倒的多数であるということです。
 いつの時代も独立志向型の人が起業するケースはあります。特にライフシフトという考え方を知らなくても、ある一定数起業や独立する人はいるわけで、ライフシフト関連の事業者は、これらの人たちをライフシフトロールモデルとして追認しているだけのように思います。
 元々高い能力を持つ人の起業に至るサクセスストーリーをいくら聞いても、セミナーの受講者がライフシフトできるわけではありません。
 ライフシフト=シニア世代の起業・独立や働き方・キャリア形成という捉え方か変わらない限り、世代に関係なくライフシフトするという文化が日本に根付くのは、もう少し先になるように思います。

 主にシニア世代の男性をターゲットにした「ライフシフト=起業・独立」という立付けに若干疑問があった私は、自分なりにライフシフトの考え方をもとに、アレンジして、ワークショップを中心とした全5回のコンテンツにまとめ、2020年7月と12月に「ライフシフトゼミ」として、開催をしました。
 ゼミの対象(ターゲット層)はミドル・シニア世代の男性には限定せずに集客しましたが、実際の受講者は30代の男性3名と40~50代の女性5名でした。受講者8名全員が各自ワークシート12枚作成するという少々タイトな内容でしたが、全5回の講座をやり切りました。