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お釈迦さまの教え¬~スピリチュアル・ペイン

臨終における後悔

 人が人生を振り返って、一番よくある後悔は、「もっと色々なことに挑戦すればよかった」というものです。
 しかし、やりたいことを精一杯やっていれば、後悔のない人生になるのでしょうか?
 実際、やりたいことをやった上に、トップレベルの業績を残した人でも、後悔している人がたくさんいます。
 やりたいことをやった上に、才能を発揮して後世に素晴らしい功績を残した文化人や芸術家でさえも、臨終に後悔しているのです。
 すべての人はやがて必ず死んでいきます。誰も例外ではありません。
 人生を終わっていくときには、一体どんな後悔が起きてくるのでしょうか? 

人生の目的への後悔

 人は、まもなく自分が死ぬと自覚したとき、今までとまったく違う後悔が起きてきます。
 それは、臨終に自分の人生を振り返ったときに起きてくる
「自分の人生は一体何だったのだろう?」
「自分が生きてきた意味はあるのか」という「人生の目的への後悔」です。
 この心の痛みを近年は「スピリチュアル・ペイン」と言われます。
 医学では、肉体の苦痛には対処できますが、このスピリチュアル・ペインといわれる心の痛みはとることはできません。

 これをお釈迦さまは、「大命まさに終らんとして悔懼(けく)交(こもごも)至る」(『大無量寿経』)と説かれています。
「大命(だいみょう)」とは、肉体の命です。
「まさに終わらんとして」ですから、命がいよいよ終わろうとする臨終に、ということです。
「悔(け)」とは、過去に対する後悔
「懼(く)」とは、未来に対する怖れです。
 臨終の人の心に、後悔と怖れが代わる代わる起きてくるということです。
 過去に対する後悔とは、これまでの人生を振り返って、何にもならないものばかりを求めてきたという後悔です。
 いつかは死ぬとわかっていたのに、なぜ死の大問題を解決しなかったのか。
 死を見つめずに、目を背けて逃げ回っていたのか。
 あと回しにしているうちに、あっという間に人生が終わってしまい、取り返しのつかない後悔をするということです。
 
 お釈迦さまがいうように、後悔しないで人生を終えるのは、容易ではないことのようです。