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介護保険制度利用のしかた 

介護保険サービスの利用

 ケアマネジャーの安田さんは中山純子さんから夫の隆さんの状況を聞いて、デイサービスの利用を提案しました。
「中山さん、現在あまり外に出られないようですね。先日も家の中で転ばれて、膝を痛めたとお聞きしました。このまま家にいるだけだと、いつか歩けなくなってしまうかもしれませんよ」
「一つご提案ですけど。デイサービスという、朝車が迎えに来てくれて、お風呂に入ったり、食事をしたり、レクリエーションをしたりして、夕方家まで送ってくれるサービスがあるんですけど、よかったら利用してみませんか?」
 安田さんの話を黙って聞いていた隆さんは応えました。
「俺はそういうの、嫌いだ。俺は行かない。歩くのもできる」
 隆さんはおもむろに立ち上がると、室内を歩き始めました。
「お父さん、分かりましたから、座ってください」
 純子さんは慌てて、夫を制しました。
「中山さん、お気持ちはよく分かりました。それでは1回だけお試しで行ってみるのはいかがですか?もし1回行って気に入らなかったら、続けて行かなくて構わないので」
 安田さんの強い熱意に押されたのか、隆さんは言いました。
「あんたがそこまで言うなら、1回だけなら、あんたの顔を立てて行くよ。でも嫌だったら、もう行かないよ」

 2週間後、隆さんは安田さんに紹介されたデイサービスをお試し利用しました。
 結果、デイサービスでカラオケをやった隆さんは、上機嫌で帰ってきました。
 安田さんは、純子さんから隆さんが歌を好きだったことを聞いていました。
 安田さんはデイサービスの管理者にその情報を伝えておき、当日にカラオケをやってもらったのでした。
 現在、隆さんは週2回のデイサービスを楽しみに通所しています。 

介護保険料

 我が国では従来家で親の介護をするのが一般的でしたが、2000年に介護保険制度が導入され、以降「介護の社会化」がされました。
 介護保険は健康保険と同様の社会保険です。
 すなわち、被保険者が保険料を支払い、その保険料と税金によって制度が運営されています。
 介護保険の場合は、保険料を支払うのは40歳以上ですが、使えるのは原則65歳以上です。
 併せて、65歳以上の人が全て使えるのではなく、要介護認定をされた人が対象となります。
 介護保険料は自治体ごとに違い、現在全国平均で5,000円弱ですが、2025年には8,000円を超えると言われています。
 介護保険の申請は、各市町村に行い、役所から認定調査員が来て74項目に及ぶ調査を実施し、このデータをもとに一次判定し、認定審査会を経て、要介護度が決定します。
 要支援1・2、要介護1~5という認定結果が保険証に記載されます。ただ、自立(非該当)の場合は利用できません。

介護保険利用限度額

 介護保険をどのように利用するかは、介護度別に1カ月に使える限度額が決められています。
 介護保険の自己負担は原則1割負担ですが、例えば要介護度4の人の場合、月に304,000円分を限度に介護保険サービスを1割負担の30400円で使えるということになります。
 介護保険サービスのデイサービス、ホームヘルプサービス、シュートスティサービス等は、それぞれ1日あるいは時間単位で利用料(1割負担)が決まっています。
 要介護4の人が1日1,000円(仮の設定価格で実際は違います)のショートステイを20日間使ったとすると20,000円(1,000円×20日)で30,400円以内なのでOKです。
 実際は自己負担の10倍の200,000円がサービスの実際の費用です。
 費用の9割の原資が保険料と税金で賄われ、これを事業としてやっているのが、デイサービス、特養、有料老人ホーム等を運営するや介護保険事業所です。
 介護保険の相談窓口は、自治体ごとに概ね中学校区に1つの割合で地域包括支援センターが設置されています。
 また、介護保険サービスを利用する場合には、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者の介護度の利用限度額内で1カ月ごとにサービス計画を立てて行います。

65歳未満で利用できる例外

 介護保険の利用は原則65歳以上ですが、介護保険料は40歳以上の人が徴収されます。
 保険料を支払っているのに、介護保険が使えないのはおかしいと思いませんか。
 原則65歳以上の人しか使えませんが、例外的に40歳以上で利用できるのは、決められた「16の特定疾病」に該当する場合です。
 特定疾病に1つに「脳血管疾患」がありますが、わかりやすい例で説明しますと、脳血管疾患による片麻痺になった40歳以上の人は介護保険が使えますが、交通事故で片麻痺になった場合は使えません。
 このケースが65歳以上ならば、片麻痺になった原因は問いませんので、交通事故の場合でも介護保険の対象となります。
 ご理解いただけましたでしょうか。