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介護保険制度申請から利用まで

介護保険申請

 中山純子さん〈仮名、以下人物は全て仮名〉は72歳で、78歳になる夫の隆さんと○○県T市に2人で住んでいました。
 63歳まで大手建設機器メーカーに勤務していた隆さんは、定年後暫くは趣味のゴルフを会社の元同僚たちと頻繁に行っていましたが、70歳を過ぎてからは外出する機会が徐々に減り、自宅近辺を散歩するのが唯一の日課になっていました。
 しかし、最近は散歩するのも億劫になってきたようで、純子さんが促しても行かないことが多く、家でソファーに腰かけて、日中ずっとテレビを観て過ごしていました。
 以前は穏やかで物分かりのよい隆さんでしたが、最近些細なことで声を荒げることが多くなり、純子さんはストレスになっていました。
 加えて、先日自宅の居間で転び、膝を痛めて、室内でも何かにつかまって歩かなければなりませんでした。
 純子さんは、夫が歩けなくなり、要介護状態になることを心配して、以前市役所からもらった介護保険の手引きを見て調べました。

介護保険の認定調査と利用

 居住する地域にある地域包括支援センターに連絡すると、要介護認定調査を受けることを勧められ、翌週に社会福祉士の田中さんが自宅まで来てくれました。       
 田中さんが来ると、隆さんは愛想よく応対し、質問にも調子よく応えていましたが、記憶に関する項目はうまく応えられなかったように傍で見ていた純子さんは思いました。
 認定調査後に、介護保険の利用について、大まかな説明を田中さんがしてくれました。
 要介護認定をされると、非該当(自立)の場合を除いて、要支援1・2から要介護1~5までの認定結果が介護保険被保険者証に記されて、市役所から届きます。

 田中さんは、介護保険について健康保険を例に、分かりやすく説明してくれました。
「皆さんは健康保険料を支払って、病気になったら、健康保険証を持って病院に行けば、診察をしてくれて、費用の3割負担をすればいいですよね。介護保険も全く同じ仕組みです」
「介護保険料を予め払って、介護が必要になった時に、ホームヘルパーさんやデイサービスなどの介護保険サービスを費用の原則1割負担で使えるという制度です」
「病院での診察が介護保険サービスだと考えればよいと思います」
「ただ健康保険が年齢に関係なく使えるのに比べ、介護保険は利用できる人が限られるという特徴があります」
「原則65歳以上で、かつ要介護認定(要支援1~要介護5)を受けた人でないと利用できません。80歳過ぎでいても自立していて、要介護認定が非該当の人は使えません」
 隆さんはソファーに横になって寝てしまいましたが、純子さんは頷きながら熱心に聞いていたので、田中さんは説明を続けました

要介護認定

「1カ月に介護保険を1割負担で利用できる限度額が要介護度別に決められています。要支援1が一番少なく、介護度が上がるに従って使える金額が多くなっていきます」
「分かりやすく言うと、1時間ヘルパーさんに来てもらったら○○円とか1日デイサービスを利用したら○○円とか金額が決まっています」
「要介護度によって各自が1カ月に使える金額を超えないように調整して計画を立ててくれるのがケアマネジャー(介護支援専門員)です。要介護認定が決まったら、ケアマネジャーに相談してくださいね」
 田中さんは純子さんに優しく声をかけました。

 要介護認定調査を実施してから約1カ月後に、調査結果が郵送で送られてきました。
 隆さんの認定は要支援2でした。
 自宅から近い居宅介護支援事業所を市役所で紹介してもらい、隆さんを担当してくださるケアマネジャーの安田さんが訪問してくれました。