おひとりさま男性の孤独
8050問題の行方
最近、知り合いのケアマネジャーからよく聞く話があります。
「高齢者の介護保険の利用相談でご自宅に伺うと、50歳位のいわゆる“ひきこもり”の息子がいて、自分のことより、子どもの将来を案じて話されるのですけど、お応えすることができない」というものです。
2019年3月に内閣府から発表された「生活状況に関する調査(2018年度)」において、40歳から64歳までの中高年層のひきこもりが全国で61.3万人いると推定され、大きな話題をよびました。
前回の調査では15歳から39歳までの推計は54万人。
中高年のひきこもりは、若年層よりも多いという衝撃の数字でした。
社会との接触を断ち、仕事もせず自分の部屋から一歩も出ない、ひきこもりの若者が増えていることは周知のとおりです。
ところが、ひきこもりが長期化すると、若者個人だけではなく、家族全体にまで悪影響を及ぼすようになります。
「8050問題」は、80代の親が50代の子どもを経済的に支える必要がある状態を指します。
子どもは仕事がなく収入もないため、親の年金が一家の主たる収入源になります。
従来、80代の高齢期を迎えるころには、仕事はリタイアして年金を収入源とした生活を送り、子どもや孫に支えられながら余生を送るのが一般的でした。
ところが、8050問題を抱える家族の場合、定職に就かない子どもをいつまでも親が扶養しなくてはなりません。
わずかな年金だけで夫婦、そして子どもの生活費を賄っていくのは限界があり、親が高齢になるほど医療や介護での支出も多くなるため、家計が破綻するリスクも大きくなります。
8050問題の原因は、1980~1990年代にかけて顕在化した若者のひきこもりを放置したことにあると指摘されています。
当時10~20代だった若者が数十年間もひきこもり生活を続け、50代を迎えてしまったことになります。
親が現役世代ならば収入もある程度は見込めるため、ひきこもりの子どもを養っていくのはそう難しくなかったでしょう。
しかし、親が定年を迎え、経済的にも体力的にも衰えた状態で、以前と同じような生活レベルを子どもに提供し続けていくのは、難しい状況になります。
親亡き後のひきこもりの子どもはどうなるのでしょうか。
親が遺した預貯金を使い果たし、相続した実家も売却しなければならない日がじきに訪れます。
その後は生活保護を受けて、賃貸アパートでのおひとりさま生活が生涯続きます。
厳しいようですが、これが現実です。
内閣府でもこれを問題視し、厚生労働省が「ひきこもり対策推進事業」を発足しました。
ひきこもっている本人やその家族の相談などを受け付ける「ひきこもり地域支援センター」を立ち上げ、各家庭にあった自立支援をおこなっています。
「高齢者の介護保険の利用相談でご自宅に伺うと、50歳位のいわゆる“ひきこもり”の息子がいて、自分のことより、子どもの将来を案じて話されるのですけど、お応えすることができない」というものです。
2019年3月に内閣府から発表された「生活状況に関する調査(2018年度)」において、40歳から64歳までの中高年層のひきこもりが全国で61.3万人いると推定され、大きな話題をよびました。
前回の調査では15歳から39歳までの推計は54万人。
中高年のひきこもりは、若年層よりも多いという衝撃の数字でした。
社会との接触を断ち、仕事もせず自分の部屋から一歩も出ない、ひきこもりの若者が増えていることは周知のとおりです。
ところが、ひきこもりが長期化すると、若者個人だけではなく、家族全体にまで悪影響を及ぼすようになります。
「8050問題」は、80代の親が50代の子どもを経済的に支える必要がある状態を指します。
子どもは仕事がなく収入もないため、親の年金が一家の主たる収入源になります。
従来、80代の高齢期を迎えるころには、仕事はリタイアして年金を収入源とした生活を送り、子どもや孫に支えられながら余生を送るのが一般的でした。
ところが、8050問題を抱える家族の場合、定職に就かない子どもをいつまでも親が扶養しなくてはなりません。
わずかな年金だけで夫婦、そして子どもの生活費を賄っていくのは限界があり、親が高齢になるほど医療や介護での支出も多くなるため、家計が破綻するリスクも大きくなります。
8050問題の原因は、1980~1990年代にかけて顕在化した若者のひきこもりを放置したことにあると指摘されています。
当時10~20代だった若者が数十年間もひきこもり生活を続け、50代を迎えてしまったことになります。
親が現役世代ならば収入もある程度は見込めるため、ひきこもりの子どもを養っていくのはそう難しくなかったでしょう。
しかし、親が定年を迎え、経済的にも体力的にも衰えた状態で、以前と同じような生活レベルを子どもに提供し続けていくのは、難しい状況になります。
親亡き後のひきこもりの子どもはどうなるのでしょうか。
親が遺した預貯金を使い果たし、相続した実家も売却しなければならない日がじきに訪れます。
その後は生活保護を受けて、賃貸アパートでのおひとりさま生活が生涯続きます。
厳しいようですが、これが現実です。
内閣府でもこれを問題視し、厚生労働省が「ひきこもり対策推進事業」を発足しました。
ひきこもっている本人やその家族の相談などを受け付ける「ひきこもり地域支援センター」を立ち上げ、各家庭にあった自立支援をおこなっています。
心身をむしばむ高齢者の孤独
老後の不安といえば、お金、そして健康がまず思い浮かびます。
しかし、老年期においては、退職、そして配偶者や兄弟姉妹、友人との死別といったことが連続して起こり、大きな問題として浮上するのが、「孤独」です。
2018年版高齢社会白書によると、2060年には世界で65歳以上の人口比率が17.8%にまで達し、今後半世紀で高齢化が急速に進展、先進国のみならず、発展途上国においても高齢化が進むとされます。
日本では2035年には、国民の約3人に1人が高齢者となると予測されていることは、以前お伝えしたとおりです。
高齢化に伴う課題は様々ですが、近年の家族観やコミュニティの在り方の変化と相まって深刻な問題となっているのが、孤独な高齢者の増加です。
各国でその割合は危機的状況にまで深刻化しており、ヨーロッパでは英国政府が孤独高齢者問題を解決するために、多額の資金を投じる計画があると報じられています。
孤独が心身機能に及ぼす影響は想像以上に大きく、高齢者の社会的孤立は「何かあった時に発見が遅れる」以上に大きな問題です。
うつ病などメンタルヘルスに悪い影響を及ぼすことは言うまでもなく、心疾患やガンなど多くの疾患のリスクを上げると言われています。
喫煙や肥満が健康に悪いことは周知の事実ですが、孤独はそれ以上のリスクファクターとして、公衆衛生分野で注目を集めています。
病気だけではなく、身体機能の低下や日常生活で必要な動作の能力が低下することもこれまでの研究で示唆されており、また、高齢者の孤独は医療・介護費用の増大という問題もあります。
おひとりさまの男性の場合、定年後地域コミュニティや友人との交流が主な人と接する機会となりますが、現役時代に会社中心の生活を送ることが多かった結果、男性は退職後に新しい人間関係を築きづらく、配偶者に先立たれた場合、一気に弱る場合が多いようです。
現に、孤独死の80%以上は男性です。
総務省は「社会的孤立」を「家族や地域社会との交流が客観的にみて著しく乏しい状態」と定義しました。
併せて、その対策が急務であるとして、定期巡回や居場所づくりといった、従来の対策を続けると同時に、ICTの導入によるSNSやインターネット通話サービス支援の試みも始まっています。
しかし、老年期においては、退職、そして配偶者や兄弟姉妹、友人との死別といったことが連続して起こり、大きな問題として浮上するのが、「孤独」です。
2018年版高齢社会白書によると、2060年には世界で65歳以上の人口比率が17.8%にまで達し、今後半世紀で高齢化が急速に進展、先進国のみならず、発展途上国においても高齢化が進むとされます。
日本では2035年には、国民の約3人に1人が高齢者となると予測されていることは、以前お伝えしたとおりです。
高齢化に伴う課題は様々ですが、近年の家族観やコミュニティの在り方の変化と相まって深刻な問題となっているのが、孤独な高齢者の増加です。
各国でその割合は危機的状況にまで深刻化しており、ヨーロッパでは英国政府が孤独高齢者問題を解決するために、多額の資金を投じる計画があると報じられています。
孤独が心身機能に及ぼす影響は想像以上に大きく、高齢者の社会的孤立は「何かあった時に発見が遅れる」以上に大きな問題です。
うつ病などメンタルヘルスに悪い影響を及ぼすことは言うまでもなく、心疾患やガンなど多くの疾患のリスクを上げると言われています。
喫煙や肥満が健康に悪いことは周知の事実ですが、孤独はそれ以上のリスクファクターとして、公衆衛生分野で注目を集めています。
病気だけではなく、身体機能の低下や日常生活で必要な動作の能力が低下することもこれまでの研究で示唆されており、また、高齢者の孤独は医療・介護費用の増大という問題もあります。
おひとりさまの男性の場合、定年後地域コミュニティや友人との交流が主な人と接する機会となりますが、現役時代に会社中心の生活を送ることが多かった結果、男性は退職後に新しい人間関係を築きづらく、配偶者に先立たれた場合、一気に弱る場合が多いようです。
現に、孤独死の80%以上は男性です。
総務省は「社会的孤立」を「家族や地域社会との交流が客観的にみて著しく乏しい状態」と定義しました。
併せて、その対策が急務であるとして、定期巡回や居場所づくりといった、従来の対策を続けると同時に、ICTの導入によるSNSやインターネット通話サービス支援の試みも始まっています。