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いき活のススメ⑤

9.やりたいことをやる!

私はアルツハイマー型認知症の母を在宅介護するため、60歳定年を機に、9時5時の仕事をキッパリ辞めました。たまたま知人が自宅の近くで介護事業所を運営したいたので、仕事について相談すると、親を介護しながら時間に拘束されずに勤務して構わないという有難い条件で雇ってもらえました。一方、私は以前から関心のあった空き家活用の活動を始めました。地域でボランティア活動を行っている皆さんの活動場所を提供するため、空き家を所有する方とマッチングをして、子ども食堂を開設するお手伝いなどをさせてもらいました。空き家の活動を始めて1年過ぎた頃には、NHKの取材でテレビ出演したり、NHKFM放送で話したりする機会にも恵まれました。60歳を過ぎてNHKの公共電波に乗るなんて、私にとっては夢のような出来事です。
昨今ミドルシニア向けの男性週刊誌では、終活に関連する記事をよく目にしますが、60歳を過ぎてやってはいけないことのベスト3は何かご存知でしょうか?それは、「株式投資」「自宅を売却して引越すこと」そして「起業」だそうです。普通なら、還暦過ぎて起業するなんて、止めた方がいいと言われるでしょうし、実際退職金を注ぎ込んで起業したものの、うまくいかない場合も少なくありません。でも、私はやりたいことをやらずに後悔するのが嫌でした。60歳から始めた空き家活用が面白くて、経営のことなど全く分からなかったのですが、人を雇うわけでもなく、自分一人で身の丈にあった小商いならば出来るのではと考えて、一般社団法人を62歳で設立しました。こんなチャレンジは、50歳代までの私では到底考えられなかったことです。母の認知症が進行して、知人に雇って貰った会社も辞めることになりましたが、私は母を介護しながら、会社勤めの時にはできなかった、好きな文章を書くことを始めました。私は自然にやりたいことしかやらなくなりました。実は母親の介護も、私がやりたかったことでした。大変な親の介護を何故やりたかったのか不思議に思われるかもしれませんが、そのお話はまた別の機会にさせてもらいます(※)。「カネなし・コネなし・キャリアなし」で12回の転職を繰り返してきた私でも、チャレンジすることはできました。一度チャレンジしてみたら、思いもかけぬ世界が目前に拡がることを実感しました。私はいま、自分ができることで、自分がやりたいことしかやっていません。
(※)『ケアマネだった僕がケアメンになってアルツハイマーの母を自宅で看取ったら幸せになった訳』根岸幸徳著 2022年5月刊 Amazon Kindle出版

10.すべてがいまにつながる

私は、高齢福祉分野のソーシャルワーカーとして20年やってきましたが、「人の居場所」について以前から関心がありました。私は不動産の仕事をやっていた経験を活かして、昨今社会問題化している空き家を活用したコミュニティの創出を考え、2017年に活動を始めました。住まいやまちづくりに精通した方との出会いにも恵まれ、活動開始半年程で、築60年の古民家を活用して地域の「子ども食堂」を開設するグループの支援をすることができました。この支援活動を通して、私は自分がやりたいことを形にする楽しさを知りました。自分で自由に考えて創造していくことは、雇われの身では経験できなかったことです。これまで一か所に落ち着けず転職を繰り返してきたことは、私のコンプレックスになっていましたが、この経歴も見方を変えれば、他人に比べて色々な仕事をやってきたという「強み」になります。
空き家を活用した子ども食堂の創出は、私にとって意味ある契機となりました。思えば、学習塾の子供たちに教えた経験により、人に分かりやすくものを伝える技能を身に付けることができました。高齢者福祉の現場で対人援助を行ってきた業務は私のコミュニケーションスキルを培いました。今までやってきた脈絡のない職務経験が、すべていまに繋がっているのだと思えたとき、私のなかでブレイクスルーが起こりました。私が小学6年の時に卒業文集に書いた将来の夢は「小説家」。幼い頃に文筆家に憧れ、学生時代は子どもの教育を考え、社会人になってからは児童福祉や学習塾の講師、不動産の業務をやり、40歳からは高齢者福祉の業界でやってきました。
自分がやりたいことは、過去を振り返って「思い出せばいい」のです。「ものを書くこと」「人に教えること」「人が成長すること」「人が活かされる場所のこと」。こうした想いは、ずっと以前から私のなかにあったものでした。人生に無駄なことは一つもなく、すべてが生まれた時から必然で、自分が本当にやりたかったことを思い出して、それをやるかどうかだけです。
好奇心旺盛で移り気な私は、これからも自分がやりたいと思うことをあまり深く考えずにチャレンジしていきます。何か成果を求めるのではなく、チャレンジすること自体を楽しんでいきます。人は自ら歩んできた人生のなかに「自分らしく生きる」ヒントを誰もが持っています。
イギリスの女優/オードリー・ヘップバーンの言葉を紹介します。「過去へさかのぼりましょう。小さかったときに何に幸せを感じたのかを探りましょう。私たちはみんな成長した子ども。だから人は回想し、愛したものや気付いた現実を探し求めるべきなのよ」