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いき活のススメ④

7.転職を繰り返した人生

前回まで、ミドルシニア世代のいき活モデルをご紹介しましたが、私自身がいき活人生に至るまでのお話をさせて頂きます。
私は62歳で退職するまで、実は12回転職しました。学校を卒業したら一つの会社に定年まで勤めるのが普通だった同年代の人たちと比べ少し変わっていたと思います。
でも私の場合、外資系の会社をキャリアアップしながら転職していくというような、カッコいい経歴ではありません。不動産業や学習塾の講師等、いくつかの業種を転々としましたが、40歳を過ぎてからは「仕事がハード、給料が安い、人手が足りない」と言われる介護業界に飛び込みました。資格を取得して、やっと自分のポジションを確保できたように思いました。介護の仕事に従事しても転職は続きました。24歳から62歳まで12回転職したわけですから、約3年に一度職場を変えてきたことになります。
55歳を過ぎた頃「このままの人生で良いのだろうか」「自分が人生を終える時に後悔をしないだろうか」と、漠然と考えるようになりました。「悔いのない人生を生きる」にはどうしたらいいのかを考えるうちに、何の根拠もなく《自分は56歳のときに変わる》と、何故か心に決めました。
「自分の何をどう変えるのか」は全く分かりませんでしたが、その思い込みのままに、私は56歳で周囲の反対を押し切って、11回目の転職をしました。私が転職を繰り返してきた一番の理由は「どこにでもある職場の人間関係のつまずき」によるものです。何度転職しても、自分が苦手なタイプの人はどこの職場にもいました。職場で苦手な人にはなるべく関わらないようにしましたが、それでも関わらざるを得ない状況になり、ストレスが溜まって耐えられなくなると、その度に苦手な人から逃げるように職場を辞めました。
私が他人に対する苦手意識を払拭することができたのは、11回目の転職をした後、58歳の時でした。いつも他人の顔色を伺い、他人と比較しながら生きてきた人生に60歳を前にしてようやくピリオドを打つことができました。自分の中から、何かに対する「怖れ」がなくなりました。その結果、私の人生は一変したように思います。
他人の評価を気にすることがなくなり、自分が思うことをはっきりと主張し、何事にもチャレンジできるようになりました。以前は、考えてもなかなか行動に移せなかった私は、考える前に行動するいき方に変わりました。ずいぶん廻り道をしましたが、還暦を迎えて、私はようやくスタートラインに立ったような気がしました。いまは「始めるのに遅すぎることはない」と心底思います。

8.自分の弱さを払拭する

私は人と対立するのが苦手で、常に他人の評価を気にしながら、八方美人的ないき方をずっとしてきました。まわりに敵をつくらない反面、物事をはっきり決められず、他人の意見に従う優柔不断なところがありました。
私の苦手なタイプは、私と真逆なものをはっきり言い、押しも強い人です。相手は意識してなくても、私はこのタイプとは対等な関係にならず、支配・被支配的な関係になりやすい傾向にありました。それが転職を繰り返す一番の原因でした。自信家で独善的な人はどこにでもいますが、自分の内面的弱さからくる中途半端な性向である限り、やりたいことがあっても結局出来ないだろうと薄々は自覚していました。
私の中にある「弱さ」を克服しなければ、これからも逃げる人生を送っていくことは明らかでした。自分の弱さの壁を克服することが、私のテーマであることを意識していたものの、どうしたらその壁を乗り超えることができるか、皆目見当が付きませんでした。こうした状況下、私はまた転職をしました。
この職場は高齢者デイサービスの管理者として入職しましたが、今回私の壁になったのは20歳近く年下の青年でした。彼は私が就任するまで部署を一人で切り盛りしてきた自負があり、私の部下になった後も自分のやり方を押し通す意思の強さと実行力を持っていました。当初は上司である私に気を遣っていましたが、慣れてくると自分のやり方で仕事を進めるようになり、彼のやり方に疑問があっても、私は注意することができませんでした。スタッフ間でも彼の強引なやり方に批判が出るようになりましたが、私は彼を管理者に昇格させ、自分は一般職に退くことを考えました。私はまた、内なる壁から逃げる選択をしたのでした。
しかし、部署内では彼が管理者になるのに反対で、私は彼とスタッフの板挟みになりました。私に管理者を続けてほしいというスタッフの意見が大多数で、私はやむなく彼と対峙することになりました。覚悟を決めた私は彼を呼び出し、強い口調でこれまでの彼のやり方を、真っ向から批判しました。私は彼を完膚なきまでに糾弾し、彼の自信やプライドを全て打ち砕きました。彼は言い訳することなく、私の言うことを黙って聞いていました。彼はじきに職場を退職しました。
私の生涯でただ一人絶交した相手で、今後も相まみえることはないでしょうが、私の内なる壁を乗り超えさせてくれた彼に今は感謝しています。私は、ずっと逃げてきた内なる自分の弱さをやっと払拭することができました。