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いき活のススメ②

3.いき活は現役世代もやる?

「自分が死ぬときの備えではなく、自分が生きている間に人生をどう豊かで充実したものにアクティブデザインするか」という課題が重要である《いき活》は、シニア世代におけるお金の問題や働き方の問題を外せません。
シニア世代には「老後の資金2000万円問題」や「老後破産」が話題になったのは記憶に新しいところですが、今後危惧されるのは、自分の問題とは全く考えてもみなかった30歳~40歳代の現役世代にすら、後々の老後生活に支障をきたす危機に直面しかねないことにあります。
税制面で思い切った優遇措置を取った新NISA(2024年からスタート)は、資産形成は貯蓄ではなく運用でと、国が明言したことになります。老後の資産形成は、主に子供が成人した50歳代以降にやるものでしたが、新たな資産運用措置は、現役世代も将来に向かって、適切な対策を前倒しで進めることを喚起したように思います。今後、少子高齢化による生産年齢人口の減少は、様々な業界で人手不足を引き起こします。特に、医療・介護・運輸・建設業界の労働力不足が深刻です。一方、生産労働者の課題にAI(人工知能)の代替による仕事の喪失懸念があります。野村総合研究所は、2015年に『この先15年で日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に~ 601 種の職業ごとにコンピューター技術による代替確率を試算~』という衝撃的なデータを公表しました。試算では「AIで奪われる仕事」と「AIに奪われにくい仕事」を職種別に詳細に分類しています。最近ファミレスで見る光景~注文はタブレット端末、ドリンクはセルフ、食事は配膳ロボットが運んできたものを受け取り、支払いはセルフレジで行う。店員やレジ係を「AIで奪われる仕事」と分類した野村総研のデータが現実化しています。今後「AIで奪われる仕事」に従事する現役世代にとって、非正規雇用の増大と併せて、大きな課題となることが予想されます。また、2021年には70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が施行され、今後は70歳まで働くのが当たり前の時代になります。少子化・人口減少に伴う生産労働人口の減少を考えると、シニア世代も含めてできれば「AIに奪われにくい仕事」に従事して、長く働き続けるようにするのが得策と思われます。でも、定年を過ぎてから新しい職業に就くのは難しいので、現役時代に副業などをして、早めにリタイア後の準備しておくことが望ましいと言えます。

4.定年後に起業する選択

菊池良行さん〈仮名〉は、1962年生まれの62歳。大手印刷機械メーカーに35年勤務し、2022年60歳の定年を機に退職しました。人生100年時代を見据え、生涯現役を目指して、相続コンサルタントとして起業しました。
相続コンサルタントになろうと思ったのは、人生100年の時代、会社員を終えても人の役に立ちたいと考えました。
菊池さんは、小学2年の時に父親を心筋梗塞で亡くし、人の死を身近に感じて育ちました。 39歳で亡くなった父親の年齢を越えて自分自身の終末期を考えるようになりました。 祖父の相続で揉めて、父親の兄弟姉妹が疎遠になる経験もしました。死に行く準備を整えることはより良く生きることに繋がると考えるようになり、相続コンサルタントを志しました。
相続コンサルタント養成講座で学んでみたものの、①相続対策の具体的な進め方がわからない、②仕事になるために必要な集客が出来るだろうか? ③収入が途絶えて貯蓄を切り崩していく等、様々な疑念や恐れを強く感じるようになり、再雇用で働いておけばよかった、と後悔することもありました。起業半年後には八方塞がりの状況で、自ら命を絶つことを考えるまでに精神的に追い込まれました。それでも収入がないことで不安が募る状況を何とか変えようと、2023年2月から終活ならぬ就活を始めました。
確実な年収を求めて正社員になろうと思いましたが、全く採用されず、安定志向の会社員脳から脱することを余儀なくされました。
会社員からフリーランスへ脱皮する覚悟がやっと出来て、4月から人気ラーメン店で働き始めました。入店直後からオーナーの厳しい指導が始まり、パワハラ・暴力等が厳しい職場でしたが、自宅で何もできずに塞ぎ込んでいるよりはるかに健全で、心身ともに元気になるには働くことが必要だと実感しました。自分から辞める気はなく苦行と位置付け働き続けるつもりでいましたが、2か月勤めて突然解雇されました。結果として心身のコンディションが整い、次にコンビニで働き始めました。コンビニ業務は、レジをしながら挨拶、検品しながらレジ、というマルチタスクを要求されます。スピードも要求され、 緊張感ある毎日、業務も多岐に渡ります。週に4回1日4時間程度しか働けませんが、コンビニ業務は何より働いていて楽しいと思いました。
その後知人が経営する自動車整備工場に週16時間のパート勤務も加えて、経済的な不安が解消されるようになりました。
現在、コンサルを含め1週間の中で3つの仕事をこなす充実した働き方をしています。菊池さんの事例は定年後に起業する人たちに多くの示唆を与えるとともに、ミドルシニア世代のいき活モデルとして意義あるものです。