いき活のススメ①
1.終活から“いき活”へ
私は2020年から2023年の4年間で終活関連セミナーを60回開催してきましたが、相続・保険・遺言書いった従来の終活テーマとは別に「自分が死ぬときの準備ではなく、自分が生きている間の人生をどうするか」という関心もシニア世代にはあることを感じてきました。現在75歳以上の後期高齢者の多くが「自分が死ぬときの備えではなく、自分が生きている間に人生をどう豊かで充実したものにするか」という思いを持たれています。
今後は、男女とも健康的に若々しく生活する年数が長くなるため「老い」自体の概念が大きく変わっていきます。すると、シニア世代は引退後の生活だけでなく、人生全体を設計し直さなければならなくなるのです。私は終活ではなく《いき活》と命名して強調しました。
実際私の知人には、大手メーカーを定年まで勤め上げた人が士業の資格を取得して独立した男性や保険業務の営業をしていた女性が58歳で介護施設の施設長に転職した者もいます。また、事務の仕事をしていた50歳代女性がコロナ禍のリモートワークを機に、関東近県の空き家になった別荘を安価で購入して2拠点生活を始めたケースもあります。シニア世代の第二の人生は、仕事の理念や目的から入る男性に比べて、女性は発想が自由で、フットワークも軽く、まず楽しさを優先します。
終活セミナーでは、2022年から《いき活》をキーワードとして使い始めました。
実際2022年の終活講座受講者数と比較して、いき活をテーマにした23年の講座受講者数は2.5倍になっています。取り組む内容が共通する終活、例えば相続の仕方や手続きは制度に規定されているので、原則を各々のケースに適用することで課題を解決できます。
一方、いき活は十人十色、各自取り組むテーマも違います。
《いき活》という聞き慣れない一語に対して、講座受講者の皆様が自分なりのイメージをもって参加されているのに驚きました。いき活の中身は各自違いますが、70歳代の人も80歳代の人も、自分だったら“今後こうする、こうしたいというイメージを持っているわけです。
《いき活》の一語に、シニア世代に、何か希望や意欲をかき立てるものがあるかと思い、確かな手応えを感じています。
いき活の理念として私が掲げたのは、イギリスの喜劇王/チャールズ・チャップリンの名言「人生は怖れさえしなければ、とても素晴らしいものだ。そのために必要なものは、勇気、想像力、そして少しのお金だ」です。
今後は、男女とも健康的に若々しく生活する年数が長くなるため「老い」自体の概念が大きく変わっていきます。すると、シニア世代は引退後の生活だけでなく、人生全体を設計し直さなければならなくなるのです。私は終活ではなく《いき活》と命名して強調しました。
実際私の知人には、大手メーカーを定年まで勤め上げた人が士業の資格を取得して独立した男性や保険業務の営業をしていた女性が58歳で介護施設の施設長に転職した者もいます。また、事務の仕事をしていた50歳代女性がコロナ禍のリモートワークを機に、関東近県の空き家になった別荘を安価で購入して2拠点生活を始めたケースもあります。シニア世代の第二の人生は、仕事の理念や目的から入る男性に比べて、女性は発想が自由で、フットワークも軽く、まず楽しさを優先します。
終活セミナーでは、2022年から《いき活》をキーワードとして使い始めました。
実際2022年の終活講座受講者数と比較して、いき活をテーマにした23年の講座受講者数は2.5倍になっています。取り組む内容が共通する終活、例えば相続の仕方や手続きは制度に規定されているので、原則を各々のケースに適用することで課題を解決できます。
一方、いき活は十人十色、各自取り組むテーマも違います。
《いき活》という聞き慣れない一語に対して、講座受講者の皆様が自分なりのイメージをもって参加されているのに驚きました。いき活の中身は各自違いますが、70歳代の人も80歳代の人も、自分だったら“今後こうする、こうしたいというイメージを持っているわけです。
《いき活》の一語に、シニア世代に、何か希望や意欲をかき立てるものがあるかと思い、確かな手応えを感じています。
いき活の理念として私が掲げたのは、イギリスの喜劇王/チャールズ・チャップリンの名言「人生は怖れさえしなければ、とても素晴らしいものだ。そのために必要なものは、勇気、想像力、そして少しのお金だ」です。
2.「人生100年時代」を体現する
私が目標とする人生100年時代を体現する方を紹介します。
89歳の橋本和子さん〈仮名〉は都内で一人暮らしをしています。子供2人は、近隣に家庭をもち、孫が5人、曾孫もいます。和子さんと子供たち家族の関係は良好で、長女夫婦からは年老いた母との同居の話も出ていますが、当人は頑として受け入れません。
「私は父さん(夫)を早く亡くし、ずっと独りでやってきたし、独りのほうが気楽でいいのよ」と、あっけらかんとして言います。和子さんは、下町の江戸っ子らしく、竹を割ったような性格で、底向けに明るい人、未だ現役で働いています。
和子さんの仕事は、生鮮市場の経理で、50年以上続けています。市場で、和子さんを知らない人は誰もいないほどの有名人です。和子さんは毎朝3時に起床して、5時には職場に向かいます。職場では経理の仕事をしていますが、日中机に座っていることはあまりありません。和子さんからみれば子や孫の世代になる威勢のいい男性たちを相手に仕事をしています。とにかく忙しく、計算は電卓を使わず、暗算でやります。午後3時には帰宅しますが、一人暮らしなので、休日以外はそれから炊事洗濯をします。
1月初め、私は和子さんに会いました。「橋本さん、年始年末はどう過ごされたのですか?」「市場は年末かき入れ時だしね。30日まで仕事よ。でも私、仕事楽しいし、大好きだからね。全然苦にならないのよ」「そうですか。それはお疲れ様でした。お正月は自宅でゆっくりできましたか?」和子さんの次の言葉を聞いて、私は度肝を抜かれました。「私、2日にクラシックのコンサート行って、3日は美術館に絵を観に行ったの。よかったわよ。私の趣味だからね」と少女のような笑顔で応えました。
この時、70歳代にしか見えない彼女の若さの秘訣を見たような気がしました。好きな仕事を目いっぱいして、趣味も目いっぱい楽しむ、今年90歳になる彼女がまぶしく輝いて見えました。
和子さんは、子供たちとの同居を断り続けていますが、子供や孫たちから慕われ、とても仲良しです。和子さんは言います。「家族といえども、結局他人だからね。お互いに甘え過ぎてはいけない。仲が良いのと甘えることは別だからね」和子さんの生き方から、人生100年時代を切り拓く、いき活人生の真髄を見ることができます。
いき活人生に大切なのは、①「社会や人とのつながり」②「生きがいや趣味」③「知的な活動」等です。
和子さんは、職場で多くの人と係わりながら、知的活動である経理の仕事を楽しんでやり、収入を得ています。こうした生活は生きがいとなり、心身とも健康そのものです。和子さんが体現する生き方こそ、私たちが目指すべき「いき活人生」のモデルと言えます。
89歳の橋本和子さん〈仮名〉は都内で一人暮らしをしています。子供2人は、近隣に家庭をもち、孫が5人、曾孫もいます。和子さんと子供たち家族の関係は良好で、長女夫婦からは年老いた母との同居の話も出ていますが、当人は頑として受け入れません。
「私は父さん(夫)を早く亡くし、ずっと独りでやってきたし、独りのほうが気楽でいいのよ」と、あっけらかんとして言います。和子さんは、下町の江戸っ子らしく、竹を割ったような性格で、底向けに明るい人、未だ現役で働いています。
和子さんの仕事は、生鮮市場の経理で、50年以上続けています。市場で、和子さんを知らない人は誰もいないほどの有名人です。和子さんは毎朝3時に起床して、5時には職場に向かいます。職場では経理の仕事をしていますが、日中机に座っていることはあまりありません。和子さんからみれば子や孫の世代になる威勢のいい男性たちを相手に仕事をしています。とにかく忙しく、計算は電卓を使わず、暗算でやります。午後3時には帰宅しますが、一人暮らしなので、休日以外はそれから炊事洗濯をします。
1月初め、私は和子さんに会いました。「橋本さん、年始年末はどう過ごされたのですか?」「市場は年末かき入れ時だしね。30日まで仕事よ。でも私、仕事楽しいし、大好きだからね。全然苦にならないのよ」「そうですか。それはお疲れ様でした。お正月は自宅でゆっくりできましたか?」和子さんの次の言葉を聞いて、私は度肝を抜かれました。「私、2日にクラシックのコンサート行って、3日は美術館に絵を観に行ったの。よかったわよ。私の趣味だからね」と少女のような笑顔で応えました。
この時、70歳代にしか見えない彼女の若さの秘訣を見たような気がしました。好きな仕事を目いっぱいして、趣味も目いっぱい楽しむ、今年90歳になる彼女がまぶしく輝いて見えました。
和子さんは、子供たちとの同居を断り続けていますが、子供や孫たちから慕われ、とても仲良しです。和子さんは言います。「家族といえども、結局他人だからね。お互いに甘え過ぎてはいけない。仲が良いのと甘えることは別だからね」和子さんの生き方から、人生100年時代を切り拓く、いき活人生の真髄を見ることができます。
いき活人生に大切なのは、①「社会や人とのつながり」②「生きがいや趣味」③「知的な活動」等です。
和子さんは、職場で多くの人と係わりながら、知的活動である経理の仕事を楽しんでやり、収入を得ています。こうした生活は生きがいとなり、心身とも健康そのものです。和子さんが体現する生き方こそ、私たちが目指すべき「いき活人生」のモデルと言えます。