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明日への終活⑩

19.相続不動産の争族問題

今までは仲がよかった家族が遺産相続をきっかけに険悪になったり、疎遠であった親族が相続問でトラブルになったりすることはよくあることです。「うちは財産なんてないから、相続問題なんて関係ない」「相続で揉めるのはお金がある家の話でしょ」という人は多いようです。でも、裁判所が発表しているデータ(司法統計2017年)によると、相続トラブルになって家庭裁判所に持ち込まれるケースのうち、全体の3割強は相続財産が1,000万円以下という状況です。相続が発生すると遺産分割をしますが、遺産に不動産がある場合は少し厄介になる場合があります。法定相続人が複数いても現金だけならば等分すればいいのですが、不動産の場合は処分して現金化するか、相続人の一人が相続するか、複数の相続人で共有持ち分にするかです。問題になるのは、親が建てた実家に子供の一人が同居していた場合です。他の子供は外に出て家庭を持っていますが、同居していた子供が独身で、かつ年老いた親の介護を一人でやってきた場合などは特に厄介です。兄弟間の仲がよく、他の兄弟たちが実家は親と同居していた子供に継いでもらえばいいと言ってくれれば丸く収まりますが、現実はそう上手くいかない場合も多々あります。 
子供たちは結婚して独立し、配偶者ができると、その配偶者が義理の親の相続問題に首を突っ込んでくることもあります。相当分の遺産相続を当然の権利として主張してきます。こうして当事者も望んでいなかった争族問題に発展していきます。 
住まいの相続問題で相談に来た70歳女性のケースです。女性は2年前に夫と死別し、子供は娘が3人、上の2人は結婚して、自宅も持ち家です。女性は現在、自分名義の自宅に3女と同居していますが、自分が万一の時は独り身の3女に家を譲りたいと思っています。兄弟間は疎遠で、次女は経済的にも安定した生活をしているので、3女が家を相続することに異存はないようですが、長女は自分の子供がまだ小さく、相続の際は「もらう権利のあるものはもらうからね」と公言しているそうです。
このケースは、争族問題になる可能性が高いものです。相談者である母親は3人の娘のなかで理解のありそうな2女と相談しながら、自宅は3女に相続させる旨を明記した遺言書の作成を行うのがよいでしょう。自筆遺言ではなく、公正証書遺言にして、遺言執行人も決めておくようにします。家族の間でわだかまりを残さないためにも、できる準備をしっかりとしておくことが重要です。

20.高齢者の住宅事情

老後の住まいの確保は、高齢者の大きな問題のひとつです。賃貸物件に住んでいる人は「家賃を払い続けられるか」「老後も貸してもらえるのか」という心配があります。賃貸住宅の場合、一般的な賃貸借契約であれば、更新を断られる心配はほとんどありませんが、新たな物件を借りたい場合は、オーナ―が孤独死などのリスクを考え、断られることも少なくありません。
現在、日本の持家比率は約61%(全世代平均)ですが、過去の推移から見ても、今後の大幅上昇はあまり望めない状況にあります。仮に前提条件を甘くして、この持家比率が65%まで上昇したとしても、2040年には約320万人の高齢者が自分の家を持たない状況になります。これら高齢者は、高齢者向け施設、公営賃貸住宅、民間の一般賃貸住宅に住むことになります。しかし、施設や公営賃貸住宅で受け入れるには限度があり、大部分を民間の一般賃貸住宅に頼らざるを得ない状況にあると考えられます。
一方、持ち家の場合は、家賃の支払いはありませんが、固定資産税のほか、マンションなら管理費や修繕積立費が毎月かかり続けます。そして一戸建てでも、修繕費やリフォーム代が10年~20年おきにかかることも念頭におくことが必要です。
自宅の維持そのものが負担になっているのなら、『リバースモーゲージ』の利用があります。自分の死後は物件を引き渡すことを条件に、お金を借りるという方法です。
持ち家のある高齢者に、自宅(持ち家)を担保にしてお金を借りる、高齢者向けの融資制度です。最大のメリットは、生きている間は自宅に住み続けられることです。
死亡後には自宅が売却され、その代金を融資の一括返済に充てられます。但し、借りられる金額や契約できる年齢などはさまざまです。対象は首都圏に限定されていることが多く、一定評価額以上の基本的に一戸建てが多く、マンションは対象外だったり、地域によっては対象外となる場合もありますので、確認が必要です。
もう一つ、持ち家のある高齢者には、『リースバック』があります。リースバックは、自宅をリースバック会社に売却し、売却代金を受け取る一方で、買主にリース料を支払って自宅に住み続ける仕組みです。売却代金は一時金で受け取れます。物件は主要都市に限られ、最低価額が設けられていることもあります。引っ越しをせずに住み続けられる点が大きな特徴です。リースバック会社によって条件などが異なりますので、こちらも確認が必要です。