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明日への終活⑤

9.心身むしばむ高齢者の孤独

老後の不安といえば、お金、そして健康がまず思い浮かびます。しかし、老年期においては、退職、そして配偶者や兄弟姉妹、友人との死別といったことが連続して起こり、大きな問題として浮上するのが、「孤独」です。
2018年版高齢社会白書によると、2060年には世界で65歳以上の人口比率が17.8%にまで達し、今後半世紀で高齢化が急速に進展、先進国のみならず、発展途上国においても高齢化が進むとされます。日本では2035年には、国民の約3人に1人が高齢者となると予測されていることは、以前お伝えしたとおりです。
高齢化に伴う課題は様々ですが、近年の家族観やコミュニティの在り方の変化と相まって深刻な問題となっているのが、孤独な高齢者の増加です。
各国でその割合は危機的状況にまで深刻化しており、ヨーロッパでは英国政府が、孤独高齢者問題を解決するために多額の資金を投じる計画があると報じられています。  孤独が心身機能に及ぼす影響は想像以上に大きく、高齢者の社会的孤立は「何かあった時に発見が遅れる」以上に大きな問題です。                  
うつ病などメンタルヘルスに悪い影響を及ぼすことは言うまでもなく、心疾患やガンなど多くの疾患のリスクを上げると言われています。喫煙や肥満が健康に悪いことは、周知の事実ですが、孤独はそれ以上のリスクファクターとして公衆衛生分野で注目を集めています。
病気だけではなく、身体機能の低下や日常生活で必要な動作の能力が低下することも、これまでの研究で示唆されており、高齢者の孤独は医療・介護費用の増大という、世界各国が抱える問題をさらに悪化させています。
日本では、特に男性が現役時代に会社中心の生活になりがちなため、退職後に新しい人間関係を築きづらく、配偶者に先立たれた場合、一気に弱る場合が多いようです。昨年11月に母親を亡くした64歳独身男性は単身世帯になり母の遺品を整理していた時に言い知れぬ孤独を感じたと吐露しました。            総務省は「社会的孤立」を「家族や地域社会との交流が客観的にみて著しく乏しい状態」と定義し、その対策が急務であるとして、定期巡回や居場所づくりといった、従来の対策を続けると同時に、ICT(情報通信技術)の導入によるSNSやインターネット通話サービス支援の試みも始まっています。

10.中高年男性、友だちいない

「高齢者の孤独」に関連して、最近「中高年男性の友達いない問題が意外に深刻」という記事が話題になっています。
男性は会社勤めをしている間は、職場内や取引先との人間関係の中で気の合う友人が何人かはいるものです。しかし退職すると、そうした友人との関係の多くはなくなります。
アメリカの心理学者トーマス・ジョイナーは著書『Lonely at the top』(頂上で孤独)で、男性がなぜ孤独になっていくのかを詳細に分析しています。
「男性は成功と権力を追求する過程で、友人や家族を「当たり前の存在」とみなす傾向があり、女性に比べて「関係性を構築する努力」をしない。男性同士の交流は、例えばスポーツや興味がある「モノ」を通じて成立しているため、人に対する気遣いをする必要がなく、関係維持にあまり熱意を注ぐことがないのだそうです。
一方、「女性は小さい頃から、複雑な人間関係を読み解き、お互いの表情や感情を気遣いながら、共感関係を構築し、維持する訓練をしており、結果的に、男女の間で、対人関係の構築力に大きな差が出てしまう」と結論づけました。
イギリス・オックスフォード大学の人類学者ダンバー教授は、高校から大学に進んだ学生を追跡調査し、「女性は、電話で話すことなどを通じて長距離の友情関係を維持することができるが、男性は一緒に何かをすることがなければ、関係を継続することが難しい」と考察しました。「男性にとって、サッカーを一緒にする、観る、一緒にお酒を飲む、といった共通体験がないと、関係を維持できない」というのです。
私が終活セミナーを継続開催してきて分かるのは、中高年は男性に比べて女性の方が圧倒的にアクティブです。関係性を構築する力が優れているだけではなく、80歳代の女性が「これから何をしようかと、本気で模索している」姿を私は何人も見ました。
中高年男性が孤独から解放されるには、人間関係を構築する力を身につけるより、未来に向けて「何かやることを決め」、「実際に行動していく」ことが重要だと思います。
男性は何かを誰かと一緒にやれば、孤独は自然と解消されます。中高年男性が中高年女性に見習うべきは、年齢とは関係ないアクティブな姿勢です。