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空き家バンクは空き家問題の救世主になりえるか

空き家バンクって、何だ?

 空き家バンクは主に自治体が主体となって運営しているものが多いです。所有している空き家を貸したい人や、売りたい人が登録し、空き家バンクを介して、自治体が情報を提供するサービスです。この情報を元に、空き家を買いたい人や借りたい人が気に入った物件を見つけて申し込み、購入や賃貸ができるといった仕組みです。
 実際に売買する際には、非営利の自治体では仲介がせきないので、売主と買主が直接  売買はせず、指定の不動産事業者が仲介をすることが多いようです。賃貸の場合も同様業者が仲介しますが、物件が古く現状で貸す場合は業者を介さない時もあります。                                     
 増え続けている空き家は、社会的な問題となっていますが、古民家カフェやアトリエ等にも、有効的に活用することで地域の活性化にもつながるため、積極的な空き家活用が推奨されています。 
 また、空き家バンクは、自治体が運営しているサービスなので、さまざまな補助金制度が利用できる場合もあります。建物の改修費用などを一部補助してくれる制度などもあるので、空き家を購入する人にとっては、うまく利用すれば費用が抑えられ、メリットになります。

空き家対策全国No.1は栃木県栃木市!

 空き家問題に取り組む全国自治体のなかで、私が最も進んでいると思う栃木県栃木市を紹介します。
 栃木市は人口159,000人、世帯数66,000世帯で、宇都宮市、小山市に次いで県内3番目の都市です。栃木市の空き家数は約2,000件で、空き家率は13.1%(全国平均13.5%)です。栃木県全体の空き家総数約140,000件、空き家率16.3%からすると、県内では3ポイント以上空き家率が低くなっています。
 栃木市の空き家問題の特徴としては、持ち家率が81.4%(全国平均61.7%)と高くかつ高齢者世帯の持ち家率が90.7%(全国平均76.5%)と突出していることです。この状況から分かるのは、空き家予備軍になる住宅が非常に多いということです。
 空き家所有者の悩みとしては、
・税金がかかるだけのお荷物
・解体するにしてもお金がかかる
・何とかして手放したい等、
 空き家は「負の遺産」として捉えられることが多くなってきました。
 空き家が近い将来爆発的に増えると危惧した栃木市は、2015年住宅課を設立、空き家対策等を担当する住宅政策係と移住定住支援を担当する定住促進係を設置しました。

 市は空き家対策計画の基本方針として、
・使える空き家は活用してもらう
・使えない空き家は解体して、敷地を活用してもらう
・空き家を維持する場合は、適正に管理してもらう
・新たな空き家の発生を抑制する
を掲げ、空き家バンク制度「あったか住まいるバンク」を設立しました。

画期的な「あったか住まいるバンク」

 あったか住まいるバンクが先駆的なのは、官民協同でやっているという点です。空き家物件の情報を市が窓口となって管理し、売買等が成立した時には市内の不動産事業者が通常の仲介業として対応します。
 このようなシステムを自治体が独自に取り入れたことは画期的なことです。通常役所(自治体)は特定な事業者に利益誘導するようなことは一切しないのが原則です。
 栃木市が市内の不動産事業者に利益誘導するという見方は異論があって然るべきと思いますが、私はむしろこの政策に圧倒的な支持と称賛を送ります。
 全国の地方自治体は、逼迫した人口減少と空き家問題の課題解決するため、各自治体とも若者を移住定住促進させる等、様々な施策を行っています。しかし、空き家対策において栃木市ほど大胆な官民協同の政策を実施している自治体はほかにはないと思います。
 これがいかに有効な施策であるかの傍証は、不動産物件サイトを見れば明らかです。不動産事業者は、売却物件を民間が運営する大手不動産物件サイト(「アットホーム」「ホームズ」「SUUMO」等、複数のサイトがあります)にアップしています。このサイトには誰でもアクセスでき、市町村別にまとめられた日本中の物件を閲覧することができます。
 栃木市の場合、こうした大手不動産サイトへの売却希望登録数よりも市が運営する「あったか住まいるバンク」の登録数がはるかに多いのです。この事実は市内の不動産事業者が民間の不動産サイトよりも市が運営する空き家バンクに信頼を置いているという証でもあります。
 あったか住まいるバンクの年間物件成約件数は、全国の市町村が運営する空き家バンクのなかで日本一です。
 栃木市は空き家バンクのほかにも、「まちなか定住補助金」「多世代家族補助金」等の補助金制度や移住体験施設「蔵の街やどかりの家」を整備して、市内移住定住者を増やす施策を展開した結果、2018年版「住みたい田舎ベストランキング」で若者世代1位、子育て世代・シニア世代2位、総合部門3位になりました※)。

※)参考:栃木市の空き家対策について 栃木市住宅課作成資料